長野、愛知県との境界付近の静岡県水窪町浜松市)という町がある。ここには7年に1度出現するという不思議な池がある。はじめて池の存在を知ったのは、ナショナルジオグラフィック誌日本版の、クボタかどこかの広告に写真が掲載されていたもの。ふだんは何もない杉林に、突如周囲200M、水深3Mほどの池が現れるという。水はどこまでも透明で、その神秘的な姿は「もののけ姫」の世界のよう、と知人は語っていた。
池が出現した年はS29、36、43、50、57年、H元年と7年おきで、前回の出現は2年遅れのH10年10月。それから7年後の去年はまだ出現していない。

前回出現の直前、たまたま水窪町観光協会か役場かに問い合わせした。「まだでていません」と聞いていた数日後、TVのニュースで幻の池出現を知った!ニュースになったのが土曜日、しかし翌日は会社関係の用事が入っていた。池は出現後10日ほどで消えてしまうのだが、仕方なく翌週にいくことにした。

浜松駅から車で2時間ほどで水窪町に着く。この日はまだすいていたようだが、池の出現直後は大渋滞だったようである。水窪駅から南に下った場所に池の平への登山口がある。駅からの時間を含めると歩いて2時間弱かかる。東京から日帰りで行くのは結構困難である。朝6時半におきて出発したが登り始めるのはお昼前だった。出現後しばらく経っていることもあり、池が消えていないか心配であった。観光客は結構来ていた。池を見に行った帰りと思われる人たちに登山口付近で池の様子を聞いた。

「80cmくらいはあるよ」と言われた。深さではない、直径である。ここまで小さくなってしまったか!急いで歩いた。マラソンのようにきつかった。2時間弱かかるところを1時間20分で行った。途中へろへろになっていたので、すれ違うおやじに「もうへこたれたのか!」などと言われたが、息が上がってしゃべられる状態ではなく「あほたれ、こっちは猛スピードで登ってきたんじゃ」と心の中でつぶやいた。

その後の情報だと直径は洗面器ほどになっているという。急げ!
かくしてようやく現場に着いた。そこで見たものは・・・。

なんと!わずかに湿った泥のような状態になっており、名の通り「幻の池」になっていた!

↓池の跡全体。池の底だった部分は普段から水に縁があるのか、シダ類が多く生えている。

↓木々の奥が池のあと。見物人があちこちに。

そのまま帰るのはもったいないので「現場検証」した。いったい水はどこから湧いてくるのか?地面をよく見ると、あちこちにザリガニの巣のような「穴」があいている。ここから水が湧きだしたと思われる。画面の茶色い部分が地中から押し出された土で、手前部分に直径5cmくらいの穴がある。

それにしてもなぜ7年に1度なのか?それも決まって夏から秋にかけてだ。

以上は8年も前の話になる。池を見ることはできなかったが、7年後また見に行こうと思った。早く見たいから、平日でも会社を休んででも見に行きたいと思った。前回の出現から7年経った去年も池は出なかったので、今年あたり出るのではないかとひそかに期待している。